読んだ本まとめブログ

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コンビニ人間【村田沙耶香】

コンビニ人間村田沙耶香

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コンビニ人間 (文春文庫) [ 村田 沙耶香 ]
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【あらすじ】

コンビニのアルバイトで働く38歳女の主人公。普通の家庭で育つが、小さい頃から社会の普通が分からないが、コンビニでは店員としてマニュアルどおり完璧に働けた。ある時、コンビニで働く人間を馬鹿にしている男性が新入りで入ってきて…という話。

 

【以下、読書感想文】※ネタバレを含みます!注意

結末が所謂「主人公が普通の女なって幸せに暮らしましたとさ」というような、普通のハッピーエンドではないのですが、読み終わった後に不思議と前向きになれる本でした。なぜこの本は気持ちが明るくなる本だったんだろう?と振り返った時、普通が分からない主人公が、主人公なりに自分でコンビニがいいんだ!と選んで、修正しなくてもこれが自分なんだ!と活き活きとして見えたからだと思いました。

 

主人公は合理的な人間で、幼い頃は静かにさせるために人を殴るなど反社会的なパーソナリティや共感性の低さを個性として持っています。でも、普通が理解できなくても、怒られたら学習して普通になろうと努めていて、善悪がないだけで、主人公自体が悪いわけではないと思いました。

 

また、周りを模倣することは得意で、コンビニではベテランのアルバイトとして何年も勤めています。それも誰にでもできることではなくて、主人公の強さにもなっていると思います。それが、最後の結末で、始めは真似して楽なだけだったけど、積み重ねれば合理的なこともアイデンティティにもなり得るし、彼女には彼女の行きやすい場所があるのだと思わせる力強さがあって、よかったです。

 

また、普通とは何だろう?と考えさせられる作品でもありました。結婚か就職することが社会的に普通な人間である証になっていて、そうでない人間は普通ではない、治さなければならない。そんな圧力を感じるシーンが多くあります。もっというと、死んでも食べていい鳥と可愛がる鳥がいることの違い、墓前花を添えることは優しくて花を殺すのはよい違いなど、『周りはそうしているから』という普通が分からずに、それらを主人公はなぜだろう?と本当にフラットに疑問に思います。主人公が普通ではないことを理解しようとして、普通側の人間が主人公の普通でない理由を探すこと自体、主人公にとっては不自然なのです。それを見て、善意で治そうとする側の押し付けのようなものもあるのかと新たな視点がありました。

 

ただ主人公は周囲に変だと思われることに不便さや合わせたい気持ちはあっても、そこに劣等感はありませんでした。なので、途中、普通に合わせようとするあまり、コンビニを馬鹿にしていた新入りの男性に支配されている時はただ生きているだけになってしまいます。でも、一度失ってみて、「自分はコンビニで働くのが肌に合ってたんだ!」と分かるのも個人的にはそういう人生があっていいんじゃないかと思いました。どんなに周りが下に見てきても、生きたいように生きればいい。でも、実際周りの目を気にしてしまうこともあるし、それができる人は少ないので、主人公が真っ直ぐ生きてくれてよかったと思います。

 

新入りの男性は普通になれなくて拗らせてしまっているけど、主人公に比べると自尊心が低くも高くもある普通の人で、誰よりも普通になりたいんだろうな、と感じました。

誰しも普通になって安心していたい気持ちはあると思うので、それはすごく分かります。

主人公との違いは自分で選ぶのでなく、人にやってもらおうとしたことかな、と感じました。

ただ、逆に人を動かすのは苦ではないのも個性なので、彼にも合うコンビニ的な存在があるといいなと思いました。

 

長々と書きましたが、人それぞれ個性があって、人間社会の普通という概念もあって、個性に合うフィールドもある、何を手にして満たされるかは人それぞれ、と思いました。

 

一気に読める面白いお話だったので、まだ読んでない方はぜひ読んでみてほしいです!

そして、もし読んだら感想を聞きたいです。

この本は人それぞれ感想も異なる気がするので…。