読んだ本まとめブログ

読んだ本について概要•要約と感想を備忘録として残しています。

スワロウテイル【岩井俊二】 

スワロウテイル岩井俊二】 


 

 

☞こんな人におすすめ

テーマが重めのストーリーが好き 

アクションのある小説が好き

 

【概要•あんまりネタバレなし】

『幸福な毎日はやがて色褪せ、それでも人はくり返す日々を止めることができない。歳月とか時間は、あたしたちのために用意されたものではないのかも知れない。』

私がこの小説で、一番好きな文章です。

 

(起)

訳があって不正入国をしているような人たちが、日本でゴミ捨て場と化した場所やトラックの荷台、裏社会、それらを円町(イェンタウン)と呼び、暮らしています。

フニクラたちは墓を荒らして金目のものを売り、その妹のグリコは娼婦としてポルノ写真のモデルとなったり、娼婦としてお金を稼ぐ日々です。

ある日、グリコが娼婦の駆け出しであった頃に世話になった恩人から、身元のない子供の引き受けを依頼されます。

仕方なく引き受けたグリコの胸元の蝶のタトゥーを気に入ったので、グリコはその子供を「アゲハ」と名付けます。

 

(承)

ある日、グリコの元にお腹に傷を負い、腹の中に何かを隠したお客が来ます。

そのお客はグリコではなく、アゲハを襲おうとし、隣人のアーロウはアゲハを助けようとしてお客を殺してしまいます。

そのお客のお腹からは代議士の裏帳簿テープが出てきます。

グリコたちはお客の死体を金持ちのお墓に埋めて隠します。

 

一方、フニクラは金持ちの墓前に供えられていた花先に宝石があることを発見し、それらを毟り取って売ると大金になり、彼らはライブハウスを持つことになり、グリコがボーカルとして人気が出てきます。

 

彼らの運命は如何に…?

という話です。

 

少し難解な話でしたが、ハラハラする展開で夢中でページを捲っているうちにすぐ読み終えていました。

難民、娼婦、裏帳簿などダークなものをテーマに描いている反面、思わぬ大金を得て店を持つと言う夢が叶えられたり、ライブハウスで歌うグリコのボーカルの才能が見出されたり、希望が叶うときもあります。

また、イェンタウンでの暮らしも支え合い、笑う姿があるのが印象的でした。

 

終盤、銃撃戦のアクションシーンもありますので、そういったシーンが好きな方にもおすすめです。

 

 

【以後、終盤以降のネタバレを含む読書感想文になります。】

(転)

グリコのボーカルが芸能プロダクションに目をつけられます。

オーディションではグリコが戸籍がないことはバレますが、帰化することもできる、なんとでもできるといいます。

そうして、グリコはイェンタウンでの暮らしを塗り替え、ライブハウスを卒業し、表舞台の歌手としてデビューする日が近づいていきます。

一方で、アーロウの妻は代議士の秘書(殺したお客)はアーロウが殺したこと、住所などを金欲しさにライターに話します。

ライターがその住所に行くと、過去の胸元に蝶のタトゥーの入っているグリコのポルノ写真を見つけます。

デビューの取材を装って、ライターはグリコに近づき、グリコのポルノ写真を見せ、グリコは過去に娼婦だったこと、本当はイェンタウンの身元で今回の殺人にも関わっているのではと迫ります。

追い詰められたグリコはポルノ写真を飲み込もうとしますが、硬い写真は飲み込めず、所詮自分はイェンタウンから逃げられないことを悟ります。

 

一方で、アーロウの妻は金欲しさに様々なマスコミにアーロウの殺陣を垂れ込んでいました。

ついに代議士の耳にも入り、アーロウの妻は代議士に呼び出され、拷問のうえ、全ての情報を吐いた後に殺されます。

そして、代議士に雇われた殺し屋たちにアーロウも殺され、ライブハウスにも手が及び、フニクラは脅されて「ヒョウかリンのどちらかがテープを持っている」と言います。

 

(結)

ついにイェンタウンに殺し屋たちも現れ、フニクラはヒョウのもとまで案内すると銃で撃たれ殺されます。

ヒョウは銃撃戦で応戦しますが、腹を撃たれ、テープを渡し、破れます。

 

殺し屋たちはライターやグリコの元にも現れますが、リンが倒します。

リンはグリコたちと暮らしていましたが、おそらく実は隠密部隊の兵だったのだと思います。

 

ネタバレのあらすじは以上です。

少し読解が難しいところがあり、解釈が違ったらすみません。

映画が原作なのか、映画の元となる作品なのかはわからず読んだのですが、とにかく映画化されている本なので、アクションシーンは映画だったらもっとハラハラする展開なんだろうなと思いました。

 

小説としては、『幸福な毎日はやがて色褪せ、それでも人はくり返す日々を止めることができない。歳月とか時間は、あたしたちのために用意されたものではないのかも知れない。』この一文に尽きる気がします。

元々が娼婦、イェンタウン、体にも心にも消えたいタトゥーを追っています。

お金持ちが墓前に供えた宝石の花は、お金持ちにとっては手向けの花であっても、イェンタウンの彼らにとってはお宝で、大金でした。

大金を手にして、夢だったお店を持ったり、そのお店で才能を見出されて表部台に立てると思っても、イェンタウンで過ごした日々が消えずに、その希望も絶たれます。

グリコの兄も亡くし、デビューできる状況ではないけど、最後のシーンは出所祝いとしてなんと生き残っていたヒョウとグリコたちがライブハウスでちょっとした宴を開きます。

ライブハウスも裏社会の風俗と繋がっているようなライブハウスで、イェンタウンの延長線上であり、そこに結局は戻ってきてしまったこと。

どんなことがあっても生活は続くし、なんだかんだ生きていかなくてはいけないけど、宴など笑い合える心はあること。

 

なんとも言えない終わりでした。

映画もいつか見てみたいです。