水たまりで息をする【高瀬隼子】
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【感想】※ネタバレを含みます
ある日、後輩に理不尽に水をかけられた夫が、それから一ヶ月後、突然お風呂に入れなくなってしまう。
水道水がカルキ臭い、汚い、と感じるようになった夫、その妻が主人公のお話です。
お風呂に入れなくなることはメンタル系の病気の症状の一つとして聞くことがあります。
もし自分や、自分のパートナーが突然お風呂に入れなくなったらどうするだろう…と考えてしまう本でもありました。
それ以上に、最後の結末が一体どういうこと…??と考えてしまう本です。
一気にホラーのような展開になるというか…。
【以下、重大なネタバレなので未読の方は注意!】
自分の解釈が間違っていなければ、
夫が風呂に入れないまま退職→夫は川になら入れるので妻の地元の田舎に転居→川の付近で生きやすくなり、穏やかに暮らす→…かと思いきや、ある日ダムが放流され、川の水が増大。地元民は川に流されると危ないと暮らしの中で知っているが、東京育ちの夫は認識が甘く、危なっかしく川によく行ってしまう。妻は夫が流されていないか探すが、見つからず。→川の水が引いてできた水たまりにいた魚をお風呂場で飼おうと思う。
という流れだと読み解きましたが、最後、どういう情緒??って思いました。
途中まで、主人公は夫がお風呂に入れなくなったことを受け入れようと、あえて夫の立場に立って、無理にお風呂に入れたり病院に連れて行かないのも優しさだと思っていました。
実際、その一面もあると思うのですが、最後の夫が見つからない後に「魚をお風呂で買おう」となるのが、妻も狂ってしまったのか、元々実は夫でも魚でも平和に暮らせる生活があればよかったのか、どう解釈すればいいのか未だ困惑しています…。最後まで不穏で不気味です。
他に解釈があればぜひ教えてほしい…!!
小説の中で「生きて行くのが大変じゃない人なんていない」という文章がすごくグッときました。
主人公も夫も平気そうに振る舞って、何ともないと思おうとしても、大変じゃないわけがないんですよね。
それを他人がとやかく言うのはなんと酷なことだろうと思いました。
切なくて、やるせないような、泣きたくなるような一文で、とても好きです。